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ソープフィニッシュ

「木を石鹸で洗う?」と初めて聞いた方は「おいおい、石鹸って、水が入っているでしょ。そもそも木を水で洗うっていいのかな? 反ったり曲がったり、或は割れたりするんじゃないのかな?」と心配になったりするはずです。そして、ソープ仕上げの家具は概してお値段が高いものに多いのもこの心配に拍車をかけます。「もし失敗して使えなくなったらどうしよう・・・」と。

ソープフィニッシュを自信をもってしかも安全に施すために、「木」そして「石鹸」について少し学んでみたいと思います。

「木」について

水は根から葉へ

一般的に特に北欧の家具に使われる木、「チーク材」「オーク材」「ビーチ材」「マホガニー材」は、図にすると根があり幹があり枝があり、その枝の先には葉っぱあります。それぞれに大切な働きがあります。色々な働きがあるのですが、一般的に分かりやすく図解すると、根から水を吸い上げ、幹を通って、枝に移り、葉っぱに移動して光合成によってその水が酸素となり外へ発散されます。この逆は例外を除き基本的にありえません。例えば葉っぱに落ちた水滴が葉っぱを通して枝に移り、幹を伝って根に到達するという運動は木はしていません。

家具を作るために使われる部分は根でもなく、枝でもなく、そして葉っぱでもなく、幹の部分です。幹が太ければ太い程家具作りは楽です。ですが、家具に使える太い幹を持つ木を育てるのにオーク材でも100年はかかると言われています。

私達がソープ仕上を施そうとする家具の大半はこの幹から作られた家具です。

幹には根から上がって来た水を上に向かって縦方向に押し上げていきます。水は所謂、幹にある細い管を通って枝に運ばれます。この管を一般的に「導管」と言っています。導管は縦方向に延びています。

縦方向に木を使います

導管は縦方向です。家具を作る時、幹から適材をカットする訳ですが、基本的に縦方向に裁断された木を使用します。木目の違いを意匠に出すために横方向の材も使用する場合もありますが、基本的に縦方向に裁断された材を使います。その縦方向に裁断された材を例えば、椅子の笠木(背もたれ)であれば、横に寝かして使いますし、脚等にはそのまま立てて使います。

このように幹のどの部分をどのように使うかを決めることを「木取るをする」(きどりをする)と一般的に言われています。

木は乾燥をして使います

家具に使われる木材は特に私達が販売させて頂いている家具に使われている木は適度に乾燥がされています。木は伐採された時、ものすごく水分を含んでいます。木の「水分含有率」という言葉を聞いたことがある方も多いかと思いますが、伐採された木の水分含有率は100%を越えます。

「100%以上って存在するの?」

伐採されたばかりの木の水分含有率は120%であったり、時には200%を越える時もあります。不思議ですよね。どういうことかというと、水分含有率の0%はその木が完全に乾燥していて水分を全く含んでいない状態のことなのです。完全に水が満ちている状態を100%とするという観点ではないのです。例えば、10Lはいる鍋に水は10L入れると、100%の状態です。それ以上水は入りませんので、100%以上は存在しません。ですが、木の場合は鍋に水が入っていない状態を0%として、しかも様々な木があり鍋のように器の質量の上限がありません。なので、入れれば入れる程水分含有率が上がって行く訳です。

適正な水分含有率は

家具製作にはこの100%を越える水分含有率を5%から10%程度までに落とした材を使います。自然乾燥のまま乾燥させたり、人口乾燥をさせたり色々な方法が取られます。自然乾燥では限界があります。根っこから切り離された幹はもう水分がどこからも供給されませんので、自然と乾燥を始めます。粗っぽい言い方ですが、外にほっぽり出しておいても乾燥します。ですが、それでも15%程度が限界と言われています。これは私達が住む世界の湿度との関係です。外気はある程度湿気がありますので、外気にある湿気と木の中の水分量が平衡するのがだいたい15%だからです。ずっと何百年もの間、外気にさらしておくと、色々な要素で(例えば、ものすごく乾燥した日が続く年があったりだとか、木の中の組織が崩れて行くとか、等々)もっと乾燥は進むかもしれません。ですが何百年も待てませんので、15%程度にまで自然乾燥された材は、次に人口乾燥という過程を経て5%から10%程度までに水分含有率を落とすのです。

どうして5%から10%程度なのでしょうか?

この数字はそれぞれの家具製造会社で違っていて、カリモクでは8%程度、例えばPP Mobler等は5%程度にまで材を乾燥させるということです。それぞれの家具会社で一番加工がし易く、家具になってからでもそれ以上に乾燥が進まず、材の反り等の「狂い」が少ないであろうと考える水分含有率が違っている訳です。「どの%がベスト」という数字はありません。それぞれの家具会社がそれまでの何十年という経験からくるベストな数字を持っています。コンフォートマートが取り扱う家具会社はちゃんとした会社ばかりです。ですので、適当にどかで勝手に乾燥された分けのわからない材を使っていません。ちゃんと、そ れぞれの加工部門が指定した%に調整された材だけを使っている会社だけとしかお取り引きをしていません。「乾燥をちゃんとする」ということがいいことではなく、材料の部分からすでに、使うお客様のことを考えて正しい施しをしているとことに意味があると思うのです。それぞれの家具会社は丁寧に水分含有率を決めているとはいえ、もしかしたら皆様が家具を使う環境によってはそれ以上に、或は反対にそんなに乾燥をさせない方がいい場合があるかもしれません。今一度、言いますが、皆様のお使いの環境によっては、ちゃんと乾燥していたにもかかわらず、「反ってしまった」等不具合になってしまう可能性はあります。ですがそうなってしまった結果は悲しいのですが、私達とお取り引きのある家具会社は全て、そうならないために必死で日々努力をしています。

おうちでさらに乾燥します

家具に使われる材は適度に乾燥されていますが、実は現在の多くのご家庭はエアコン等の設置が進み、家具をお使いのうちにさらに乾燥してくると言われています。ある調査によれば、夏/冬、ともにエアコンを使用するご家庭で置かれた家具が乾燥し、納品した時の含水率が8%程でも使用過程で4%程度にまで落ちるという報告もあります。夏、冬、雨期、乾季でそれぞれ、水分含有率は変わって来ますが、一年を通して4%もおちるということは、つまり椅子ではあれば、ジョイント部分が痩せて、ジョイントが外れやすくなったり、天板が反ったりねじれたりする現象が出て来る可能性がある訳です。家具を設置する環境をよくお考え頂ければ幸いです。

ソープ仕上は短時間で

さて、乾燥された材で作られた家具にソープ仕上を施します。水分を表面に浸す訳です。心配になると思います。多少の水分、そして短時間なら木は平気なのです。

理由は色々ありますが、まずは「導管」について。

導管は縦に入っています。ソープ水に浸かる部分は導管の側面です。「ホース」と考えて下さい。ホース、側面にいくら水をかけてもその中には水は通りません。単純化しすぎて専門家に叱られしまいそうですが、導管の入り口から水を通すより側面からの方が水は通りにくいのです。導管の縦方向に(ホースで言うとホースの穴が空いている方向から)、水分を浸すと水分が木に染み込んで行きます。ただ、木の表面は細胞の塊ですので、表面からもで水分はしみます。ですが、その組織が複雑ということと、組織内の水に対する「表面張力」によってあまり水分が組織間にそれほど早く伝わりません。

ただ、それでも表面は水分で大変なことになります。考えると、短時間の水への接触であれば、表面だけの水分含有率が上がり、その深層には水分は進行しません。

乾燥している部分ががんばります

水に浸された木の表層は、細胞に水分が入り「膨らみたい」との動きが生じます。ですが、同時に水分が進行していない木の深層は「慣性の法則」(動いているものは動き続けようとする、そして止まっているものは止まっていようとする力)で、「動きたくない」という力が加わります。水分に浸されるのが短時間で、そして表層だけに止まっている場合、水分にさらされていない木の深層からの慣性の法則の力の方が勝って、木にはなんら変化は起こらないです。

ですが長時間水分にさらされると水分の進行は表層だけでなく、深層にまで浸透してしまいますので、材が動いてしまう訳です。

何度もソープでお手入れを

つまり、ソープ仕上は「短時間で」ということと「水分の拭き取りはきっちりと」が大原則なのです。そしたら、どの程度が「短時間なのか?」が問題になりますが、それは皆様次第です。何度もソープ仕上をして経験を重ねるとで仕事が早くなります。水分に浸されている時間が短ければ短い程、もちろんいい訳ですから、皆さん、お持ちの家具に何度もソープ仕上を施し、時間を短縮して、木に優しいソープ仕上をめざしましょー!!

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