
研修第2日目 「デザインとは問題解決のためにある」
本社研修でまず始めに行ったのは「Design Yard」というデザインプロセスをスムーズに行うための施設で。主にデザイン、試作などを考え話し合う場や幹部の人のオフィスとして使用されています。
エントランスをくぐると真ん中に40フィート(約13m)もあるcoffee bar。社員の人はここで仲間と軽い雑談をしたり、頭をリフレッシュしたりするそうです。
Coffee Barでコーヒーを淹れて頂き、隣にあるゲストルームにてハーマンミラー勤続30年以上のGurbさんにハーマンミラーの新製品、Living Officeについてお話頂きました。
「新製品」の説明を受けている場所がまさにその新商品の「Living Office」そのものだったのです。 まずそれぞれの作業スペースにはパーテーションが無く、パソコンすら置いていないデスクもあります。Coffee Barがあったり、所々に応接間のようなソファセットが置いてありました。数にするとここで働いている人数の45%分のデスク、パソコンしか無いとの事です。社長ですら社長室がないのは疎か、パソコンすら置いていませんでした。
Gurbさんの話によると、「人は働く時にそれぞれ一番心地良い(効率がいい)場所に移動した方が効率がいい。そしてハーマンミラーは、人は複数集まれば一人でいるより多くのアイディアを生む事が出来るという信条を持っている。個々に区切られたスペースでパソコンの画面にかじりついて作業しているより、仲間との雑談やランチを一緒に食べている時に優れたアイディアは生まれやすい。であれば、全ての従業員分のデスクとパソコンを置くスペースは不要というわけだ。そしてその分、コミュニケーションを活性化させるcoffee barやソファを置いたと」いうわけです。
これは不動産コストの大幅な削減に繋がるし、余計な電力も使わずにすみます。
この新しい空間作りは数年前にDesign Yardに導入されたとの事ですが、実際導入後仕事の効率は大きく上がったと話していました。
一見、自由気ままに配置されているようなDesign Yardですが、「どこに何を置けば最も効率的か」というのをハーマンミラーは膨大な量の企業リサーチをもとに実に緻密に決めて行ったそうです。
(この写真に写っているソファコンパクトの後ろではプレゼンテーションが行われており、まるでスポーツ観戦でもしているかのような盛り上がりをみせていました。)
「新製品」の「Living Office」といいのは商品そのものではなく「概念」です。限られたワークスペースをより効率的に使うためにどういった動きで、どういった家具や雑貨で、そしてそれをどのように配置するのかなど、お客様と共に話し合い、最善のアイディアをお客様に提案することが新商品の「Living Office」です。
ジョージ・ネルソンは「デザインは問題解決のためにある」と言いました。ハーマンミラーにとって、デザインとは問題が生まれて来る度に変化させていく問題解決策なのです。
ハーマンミラーにとってデザインは流行の先端を表したものでも、ましてデザイナーの心情を表現したものでもありません。それは人の生活をより良くし、彼らの才能や可能性を活性化させる手助けをするものです。
ネルソンやイームズがいた時代は、問題解決方法として最善の家具で対応をしていました。ですが、急速なIT化等で仕事環境はがらりと変わってしまいました。がらりと変わった仕事環境に対応するためには、「家具を提供する」というメーカーからの一方通行のやり方は時代遅れとなっています。そこでハーマンミラーはお客様と共に考え、柔軟に解決策を探って行く、そしてのその解決策の中にハーマンミラーの家具が存在しえるように商品開発をしていくというスタイルに変わろうとしています。
このDesign Yardでランチを頂きました。Gurbさんはハーマンミラー勤続35年とおっしゃっていましたが、未だに仕事への情熱を失うどころか、日々情熱が増していると言います。今でも定期的に営業のトレーニングを受けていて新しい事にどんどん挑戦しているそうです。
目をキラキラ輝かせて熱弁して頂いたGurbさん。その思いに私達参加者は早くも感動しきりだったのでした。
午後は新作のワークチェアととても小さなワーキングツール、そしてCollection(オフィス系に対してハーマンミラーのリビング系を扱うライン)の新作を見せて頂きました。そしてイームズの長年の夢であったウッドシェルチェアのプロトタイプも見せて頂きました。
