研修第3日目 「ハーマンミラーが失くさずに残している事」
「Main Site」という、R&Dや流通、経理、カスタマーケア、メンテナンス、そして受注受付等を行っている施設に案内されました。
Main Siteはかつて工場だった場所で椅子の組み立てや出荷等も行っていたそうです。
エントランス入ってすぐに、ジラードのシルクスクリーンに描かれた原画が何枚も飾ってありました。この原画を見ると彼がどれだけハーマンミラーの社員に尊敬されているのかわかります。
Main Siteを案内して下さったAlさんは40年近くハーマンミラーで働いているとのことですが、何と子どもの頃、ハーマンミラーの初代社長D J デプリーに雇われて、5ドルで雪かきのアルバイトをしていたそうです。そしてその雪かきをしていた屋根が今のMain Site。。。まさしくハーマンミラーの生き字引と言える方でした。
Alさんが棚から大事そうに出してくれたのは一つの置き時計。これはハーマンミラーのデザイナーの「ギルバート・ローディー」がハーマンミラーのためにデザインした初めてのプロダクトだそうです。
[ギルバート・ローディー]
ハーマンミラーの最初のデザインディレクター。
それまでヨーロッパデザインを踏襲したクラシカルな家具を作っていたハーマンミラーに、今のスタイルのモダンデザインの家具を導入させた。
そしてその棚の上には数枚の写真が張ってあります。
例えば、米兵だった青年が脚を痛めて退兵したが、アーロンチェアを使い始めて腰を痛めず新しい仕事に復帰出来たと言う便りの写真など。
数週間置きに変えられるという壁の写真。「この写真は誰がどのように選んで貼っているのか」聞くと、全てAlさん一人で行っているとの事でした。それはまだAlさんが若かりし頃、工場で働いていたそうです。当時の工場の仲間はルーティンワークをこなすだけで自発的に仕事をする人はいませんでした。
Alさんは仕事仲間に「どうして自発的に仕事をしないの?」とインタビューして聞いて回りました。そして導き出した答えは「自分たちが行っている仕事がどのようにお客さんと繋がっているのかわからないからだ」という事でした。
それからAlさんは工場の壁にお客さんが家具を使っている様子を掲示するようになったと言います。工場で部品を組み立てている自分の仕事も、お客さんの生活、人生に繋がっているんだという事を示すために。
それは今でもAlさんがたった一人で続けている事です。
心にジーンと来る物を感じながらAlさんとお別れをし、「Archive Room」へ向かいました。Archive Roomはハーマンミラーの様々な資料を保管しているスペースです。
中に入らせて頂くと、ハーマンミラーの昔のカタログやピクニックポスターの原画。シェルチェアの設計図等。どの引き出しを開いてもお宝が出てきます。
Archive Roomを出た後、ハーマンミラーの著名な先人たちに一歩近づけたような気がしました。
このあと、ハーマンミラーのパートナーカンパニーであるGenesis社とDavidson Plyforms社へ向かいました。
最初に見学したのはDavidson Plyforms社で、ここではハーマンミラーのクラシックラインの製品の木工加工を行っていました。ラウンジチェアやウッドシェルチェアを作っている場も見る事が出来ました。所々マイナーチェンジしている過程はあるものの、基本的にはデザインされた当時の製造方法のまま作られているということです。
Genesis社では同じくクラシックラインの製品の組み立てや椅子の縫製を行っており、シェルチェアもこちらで組み立て完成されています。ウォールナットスツールの部品やアルミナムグループチェアの縫製風景を見せて頂きました(写真撮影はNG)。
両社とも、最先端のハーマンミラーのイメージとは離れており、私がイメージする昔ながらの「アメリカンマニュファクチャー」という印象を受けました。