木はかつて生命をもっていた細胞の塊ですので、生長のあとを示す木目があります。これが、家具材料としては一番の大きな特徴になっています。年輪の幅は、樹齢、土壌、気温、湿度、日照などの記録であるので、その中には1年ごとの木の歴史が刻み込まれています。
高温多雨の条件に恵まれた熱帯地方の木には、1年中生長を続けるので、年輪ができません。生長期に洪水や早天に見舞われたり、葉を害虫に食われたりすると生長は一時止とまりますが、回復すると再び生長を続けるので、1年間に2つの年輪ができます。つまり、木目は幾星霜の風雪を耐えた木の履歴書です。人にもまた年輪があります。それは精神の中に刻み込まれるので、木のように形としてあらわれませんが、その人の経験と生きる努力の中から生まれた記録です。
だから、私達は木の年輪の複雑な文様の中に、自然と人間との対話を感じ取るのではないでしょうか。それが木肌の魅力の最大のものといえると思います。こうして、木は人によって生かされ、人によって使い込まれたとき、本当の美しさが出て来るのではないでしょうか。
よくお客様から「どの木が一番家具としていい木なのでしょうか?」と尋ねられます。正直どの木も家具にとっては間違いのない木です。使われる材はきっちり家具用に乾燥され、そして加工されます。木の色、そして木目から木の生命を感じて頂き、一番どの木がインテリアにふさわしいがじっくりお考え下さいませ。
ここでの「比重」は「気乾比重」を示します。
※木を乾燥させた状態での比重。
ウォールナット
強度と粘りがあり、乾燥後も狂いが少ないウォールナット。米国大統領の指揮台や、米国最高裁判所のベンチのほか、加工性の良さと衝撃吸収力を活かし、ライフル銃などの銃床にも使われています。1660から1720年にかけて、ヨーロッパの家具市場ではイギリスデザインやウォールナット種の製品が圧倒的な人気を独占していたため、家具の歴史の中では「ウォールナット時代」とも呼ばれていました。アメリカでは繁殖力のシンボルとされ、結婚式ではウォールナットの実があちらこちらにばら撒かれるそうです。心辺材の区分は明瞭。辺材は乳白色から灰紫色、心材は紫色を帯びた薄褐色から濃褐色。不規則な濃淡の縞を有することが多いのも特徴です。木材の多くは日に当たると色が濃くなる傾向にありますが、逆にウォルナットは色が薄くなります。杢理が美しいため、古くから高級家具材や工芸用材として用いられています。ドア材、造作材、フローリング材、内装パネル材、楽器材などに利用されています。
比重:0.63
ブラックチェリー
アメリカンブラックチェリーは北米産のサクラの中では最も有名で、古くより高級家具材として利用されてきました。時間とともに深くなるその優美な色合から、家具職人たちは、世界的な優良材マホガニーにも匹敵する材とし、「ニューイングランドマホガニー」と命名していたという史実も残っています。アメリカンブラックチェリーは家具材としてだけでなく、その樹皮からは強壮剤や咳止め薬が生成されるなど、人との深い関わりが指摘されています。材として安定しており、水にも強いことから、ジョージワシントンの入れ歯に使われていたという逸話ものこっています。辺心材の区別は明瞭で、辺材は黄白色から乳白色、心材は淡い紅褐色から濃い紅褐色になっています。使い込むほどに飴色に変色し、高級感があります。木質はやや軽軟で加工は容易です。木肌は緻密で表面の仕上がりはとても美しいです。入り皮が入ることが多いのが難点でもあります。 心材は耐久性がありますが、辺材は虫害に弱いのが難点です。乾燥はかなり速いですが、収縮率はやや高いです。家具材、キャビネット、パネル材、ドア、楽器、モールディング材などに使われています。
比重:0.55
オーク
古くから家具材や船舶用材として活用され、ローマでは「木の王様」とも呼ばれていたホワイトオーク。日本でもオークにあたるミズナラは加工性や着色性、塗装性に優れることから、明治時代には家具や内装材として賞用されました。ホワイトオークは強く、耐久性に優れることから、床材やドアなどに適しています。心材は腐食に強く、ウィスキー樽やワイン樽に使用されているのは有名です。その歴史は2000年以上も前に遡り、古くから人々がホワイトオークに親しんできた事が分かります。辺材は淡黄白色で、心材は淡黄褐色。柾目面に虎斑(とらふ)が現われます。一般に杢理は通直です。材は重硬で強靭です。乾燥や切削などの加工はやや困難です。釘打ちは穴あけ加工が望ましいとされています。 国産のミズナラよりも全体的に木目が荒く、色が白いのが特徴です。 耐久性はありますが、ヒラタキクイムシの虫害にあいやすい。家具材、床材、建築材、造作材、船舶材、枕木などに使われます
比重:0.72
ブナ(ビーチ)
辺心材の差は不明瞭で、淡いピンク色を帯びた乳白色です。材面に放射組織の小さな斑点が現われるのが特徴です。材質は重硬で杢理は通直です。釘打ちやネジは予め穴を開けた方がよいとされます。肌目は緻密で、ステイン塗装仕上げや艶出し加工による仕上がりも美しいです。粘りがあり曲げ木加工も容易です。 家具用材、内装材、フローリング、合板、轆轤細工、楽器材などに使われます。
比重:0.72
ホワイトアッシュ
オーク、マホガニーと並んでヨーロッパ家具を代表する木材のひとつです。中世ヨーロッパでは「健康の木」、古代スカンジナビアの神学の中では「天国と地上の結びの木」と言われていました。強度や粘りがあり、衝撃に強いことから野球のバットにも使用され、ベーブルースのバットにもアッシュが使われました。辺材は白色、心材は灰褐色から淡褐色や、褐色の条が入った薄黄色までさまざま。適度に堅く、耐久力に富んでいます。加工性も良く、釘やネジの保持力や接着性にも優れるます。乾燥はしやすく、スチーム曲げにも適しています。 ステインや艶だし加工で美しく仕上がります。 家具用材、建築用材、ドア材、合板材、運動器具なに使われます。
比重:0.69
お客様からのご質問の中でも多いのが、経年変化です。
木材に色の変化をもたらす最も大きな要因は"光"です。光は遮断することができないため、必ずその影響が現れてきます。光にはさまざまな波長があり、特に紫外線の影響は強く、木材の成分の化学結合を切ってしまうほどです。木材の成分のなかで最も光に敏感なのはリグニンと抽出成分です。これらの成分が紫外線などの光を吸収して、分解し、変性していく過程で木材の色も変化します。光による色の変化は、樹種によって異なり、色が濃くなっていくもの、反対にあせていくものなど様々です。例えば、ヒノキやパイン系は飴色に変化し、アメリカンブラックチェリー、ウォールナットなどは、その色合いにどんどん深みが増していきます。このように光の影響は甚大ですが、その影響がおよぶ範囲は、木の表面に限られます。激しく色が変化するのは表面から約0.2mmの深さまで。つまり、表面を削ってしまえば、またもとの色が現れてきます。
光による色の変化をさらに加速させるものが、オイルやウレタンなどによる塗装です。オイル塗装の場合、オイル自体が酸化重合し、濃色に変化するため、オイル仕上げをした木材は、木材の色の変化との相乗効果で、より色が変化します。オイルフィニッシュのアンティーク家具に色が濃いものが多いのはそのためです。また、ウレタン塗装の場合も、含有成分が紫外線の影響で黄色に変色しやすい傾向があります。