【商品説明】
Peter Hvidt（ピーター・ビッツ）とOrla Molgaard-Nielsen（オルラ・モルガード・ニルセン）の二人のコンビは30年。ずっと一緒です。私達が知る彼らの作品は家具がほとんどですが、彼らの偉業は家具ではなくどちらかという建築の方です。一番目に付く大きなものは橋。しかも、かなり大きな橋。「Little Belt Bridge」というユトランド半島とフュン島をつなぐ橋で長さ50キロ。買い付けでよく通る橋です。後年はまったく家具のデザインはしていない。家具デザインから離れた理由は定かではありませんが、色々な文献を読むと何度も、そして何度も革新的な取り組みが進まない当時の家具メーカーを批判してます。彼らには作りたいものがあった、でもそのデザインを受け入れて作ってくれるメーカーがいなかったんだと思います。当時はインハウスデザイナーなんていなくて、デザイナーは自身のデザイン事務所を持ち、毎年開催される家具見本市にプロトタイプを出展し、気に入ってくれるメーカーが声を掛けてくれるのを待つ感じです。どちらかと言うと工房優位な感じです。このModel 316を作ったSoborg社はモーエンセンのデザインした家具を作ったりして、比較的柔軟に当時斬新とされたデザインを積極的に作っていた工房。この他にこのコンビがよくデザインを提供したのは「France and Son」。この工房はFinn Juhlデザインの家具に取り組んだりと新しいものに挑戦する姿勢に積極的であったことがうかがえます。今私達がたまに聞くデンマークにあった工房の他にもめちゃ沢山の工房があったに違いない。もう廃業したとはいえ、その名前が後世まで語り継がれる工房ってやっぱり新しいものやことに挑戦していたところなんだと思います。そしてそうじゃない工房は名前も知られずひっそりと廃業していったんじゃないかと思います。厳しいが新しいことに挑戦する工房がいいのか（でも結局は廃業）、或いは新しいことに挑戦せず保守的にずっと続けていることだけに集中することがいいのか（でも結局は廃業）、その判断はとても個人的で答えるのがとても難しい。

ただこの答えとして新しいことに挑戦する姿勢は失いたくないと思っている方です。その結果がそうでない場合と同じであったとしても。理由はそれが楽しいかそうでないか。やったことのない方が苦しいが楽しい。そう思ってます。

さて、今回のModel 316、それに従い色々挑戦しました。技術的な挑戦ということもあるのですが、それよりもそのように挑戦した結果を皆様に認めて頂けるか否かの挑戦です。

このModel 316は相当な修理が必要な状態で入荷してきました。脚の1本は折れ、そしてもう1本はヒビが大きく入り、それぞれ一度修復された跡があった、そして貫が折れて、一度修復されたあとがあった。他にも色々あったのですが、大きくはこの脚と貫です。折れた脚を作り替えるかどうするか。私達は再接着を選びました。ゆっくりと時間をかけ、汚く接着された部分は剥がし、丁寧にクリーニングし補強を施し圧着しながら再接着。貫について、後貫の方が前貫と比べ状態がよかったので、前後を入替。後貫は新しく作りました。その他のマイナーな修理はもう目視では捉えられないほど綺麗に直っています。修理した箇所の沢山の画像をアップしてありますので、じっくりとご確認下さいませ。木部はすべて部品ごとになるように分解をし、丁寧に研磨しています。

座面、この椅子のオリジナルはシーグラスという素材で編まれていますが、今後、将来再び張替となった場合、オリジナル性を重視し手に入りにくい素材をあえて使うより、より経済的に手に入り易い素材で張り替えた方が使う人に取ってはメリットなのではないかとの観点からオリジナルのシーグラスではなく、Yチェア等に使われるペーパーコードを使い張替を行いました。

普通の実社会の修理作業では、手を加えるれば加える程、工数が上がり価格が上がります。ですが、オリジナル性が重視されるアンティーク品やヴィンテージ品ではその反対に手を加えただけ、価格が下がってしまいます。このお椅子の価格設定もそのようにさせて頂いております。

通常使用は問題ありません。お椅子はどのお椅子でもNGとされているのですが、床に脚をつけたまま引きずることであったり、前脚を浮かせ、後継姿勢を取り、後脚だけで座ったりする座り方は、この修理した椅子に関しては特にNGです。

ご検討の程何卒よろしくお願い致します。